2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
私は諦めてリンゴジュースの洗礼を受けようとギュッと目を閉じた。
「…」
あれ?
数秒後に訪れるはずだった冷たさとベタベタを未だに一切感じない。
何故なのかと目を再び開けると、私の目の前にはリンゴジュースでびしょ濡れになっている琥珀がいた。
「え!?琥珀!?何やっているの!?」
1度目ではそんなことしなかったじゃん!
「…紅にかかりそうだったから」
「だからって何で琥珀が!」
琥珀は後ろから見ただけでもわかるほど全身びしょびしょに濡れている。
それなのに本人は特に気にしていない様子だ。
姫巫女どれだけ盛大にぶっかけたの!?
琥珀も全然動揺していないし!
「こ、琥珀くん!ご、ごめん!私のせいで!」
琥珀越しから姫巫女を見てみると姫巫女はすごく焦った様子で軽くパニックになっていた。
「落ち着いてください。琥珀なら大丈夫ですよ。ね?」
「ああ、問題ない」
姫巫女を優しく宥める蒼に同意を求められて琥珀が平然と返事をしている。
…文句なんて言える立場じゃないもんね。私たちは。
私も1度目の時はただ「大丈夫」だと伝えた気がするし。
でも大丈夫な訳ないのだ。
「…琥珀は連れて行きます。では」
このままの格好でここに長居する訳にはいかないと、私は琥珀の腕を掴んでさっさと歩き始めた。
今のままだときっとベタベタして気持ち悪いし、濡れたままの姿でいると風邪を引いてしまう。
早くシャワーを浴びないと。