2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
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嫌な記憶だ。
起きてもいないのに起きたかのようにある記憶。
いや、実際にはこの記憶通りのことがあったらしいのだが、俺はよくわかっていない。
だけどただ言えることはリンゴジュースを姫巫女が紅にかける状況が今日確かに起こりそうになった。
まさかとは思ったが、気にかけてずっと紅の側に居続けてよかった。
リンゴジュースを浴びたのが俺じゃなかったら、もしかしたら記憶の紅のようになってしまうかもしれないから。
シャワーを浴び終わった後、浴室から出ると、着替えの服とタオルが用意されていた。
着替えの服は紅が着るには少し大きめだったので、おそらく朱のものなのだろう。
タオルで体を拭くとふわりと紅の香りが広がる。
この香りの持ち主がどうかこれからも笑顔でいられますように。
朱の服に着替えて俺は脱衣所から出た。
「紅、ありがとう」
「あ、琥珀。こちらこそありがとう…って」
紅がこちらを驚いたように見ている。
頭からつま先までじーっと見つめている紅だが、一体何を考えているのだろうか。
「…ごめん。サイズ合ってなかったね」
「あぁ。そのことか。別に問題ない」
申し訳なさそうな紅の考えていたことはどうやらこのことだったみたいだ。
確かにこの服は俺には小さかったが、別にサイズのことなんてあまり考えていないので、気にしなくてもいいのに。
そもそも紅の部屋に俺のサイズに合う服があるとは思っていなかったし。