2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
「せっかくの美貌が霞んでしまう…」
「…」
両膝に手をついて落ち込んでいる紅を今度は俺がじっと見つめる。
記憶の紅はずっと苦しそうにしていたけど、今目の前にいる紅はこんな感じでずっと楽しそうなんだよな。
「…紅、姫巫女のことは嫌いか」
「え」
つい、先ほど思い出していた記憶のせいで同じことを紅に聞いてしまった。
紅は驚いたように俺を見ている。
そして記憶と同じようにスッと表情を消した。
「嫌っていないよ」
「…そうか」
また、嘘をつかれた。
でもこれにもきっと理由があるのだろう。
だから俺は紅にあの時と同じように辛そうにして欲しくなくてこれ以上その事について触れるのはやめた。
「…俺は紅の味方だ」
それでもあの時、後悔した選択をもう2度としないように俺は静かに口を開いた。
「何があっても側にいる。だから辛くなったり、泣きたくなったら俺を頼るといい」
「…っ」
紅が大きく目を見開いている。
信じられないと言いたげな紅の瞳は珍しく少しだけおろおろしている。
もちろん付き合いの長い俺だから気づけることで一般生徒たちなら気づかないレベルの動揺だ。
記憶の紅はいつも辛そうで悲しげだった。
紅の周りには誰1人としていなかった。
俺を含む誰も。
記憶のような紅は見たくない。
家族のように一緒に育ってきた紅にはいつまでも笑っていてもらいたい。
「…ありがとう」
何故か少しだけ泣きそうな顔で紅は俺を本当に嬉しそうに見つめた。
この顔をいつまでも見ていられるように俺は〝アイツ〟と同じことを繰り返さないと誓っている。
記憶の中の俺は紅を悲しませてしまったが、今の俺は違う。
「…あぁ」
ぽんっ、と紅の頭に触れる。
そして軽く撫でる。
この愛おしい存在の笑顔は必ず俺が守る。