2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
『シナリオが大きく歪み始める一年前に時間を戻します。そこでアナタは歪みの原因を調べ、シナリオを一緒に軌道修正してもらいたいんです』
これは神様が私に最初に言った言葉だ。
つまりあれから1年経った今、ここからシナリオが大きく歪み始める可能性がある。
例えば現時点でまだ姫巫女が見つかっていないこと、とか。
「蒼、姫巫女探しはどう?」
シナリオは絶対で、シナリオによれば姫巫女を見つけられるのは蒼だけらしい。
だから蒼に姫巫女探しの進捗について聞いてみた。
「んー。全国行けるところは行って探しているんだけどね。なかなか見つからないね」
嘘だ。
相変わらず感情を読ませない笑顔を浮かべる蒼に私は心の中で疑いの目を向けた。
一応表には出さないが。
やはり蒼は姫巫女を見つけようとしていないのではないか。
「琥珀はどう?」
「俺か?」
自分の話はさっさと終え、蒼は今度は琥珀に話を振る。
蒼に話を振られた琥珀は無表情のまま蒼に視線を向けた。
光を一切受け入れない漆黒のサラサラの髪の間から覗く瞳はどこか気怠で、武、蒼、朱に負けた劣らず顔が整っている琥珀のビジュアルもお強い。
四神の家紋の方たちってまずは顔が整っていることが1番の条件なのか?と思えてしまうほど、美形揃いだ。
もちろん顔の優劣ではなく血筋が1番なのだが。
四神の血筋の良さはそのまま能力者としての強さにも繋がる。
「…俺も任務で外に出る時はなるべく探している。少なくとも蒼よりは」
「…」
琥珀の何の感情も込められていないような言葉にはこっそりと爆弾発言が添えられていた。
隣で聞いていた蒼の表情が微妙に曇っていることがわかる。
本当に微妙にだ。
よく見なければわからない顔色の変化だ。
やっぱり探していないんじゃん。