鳥籠公爵は二度目の初恋を逃がさない〜迷子のモフモフを見つけたら、公爵様に溺愛されました〜
 エリオットがどこにでもいるような普通の男だったら、シュエットは困らなかっただろう。

 だけど、残念なことに、エリオットは類稀なる美貌の男だった。

 つまり、シュエットにとっては高嶺の花。彼女には手が届かない男なのである。

 手が届かない男に、長女が手を伸ばせばどうなるのか。

 昔話にある通りに、長女が真っ先に、それも手酷く失敗するに決まっているのだ。

 失敗するのが怖かった。

 だったらまだ、記憶を失う方がマシだと思えてしまう。

「キスか……」

 隣から地を這うような声がして、シュエットは考えることをやめた。何度考えたって、まだエリオットを選べないからだ。

 それより今は、彼とのことより先に、考えなくてはいけないことがある。
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