【仮】イクツニナッテモ
「サイズは?」

「トールで、あ、ホットで」

「ホット?暑いのに?」

「ホットで」

「分かりました」

そこまで矢継ぎ早に会話をして室井君は店舗のある方に駆けて行ってしまった。
私は…どうしよう、歩いて行っていいかな。
室井君の後を歩いて行った。

何故、こんな状況に。
今、彼はここに居ていい人なんだろうか。リコと呼んでいた彼女は?夜、女の子が一人で歩いてたら危なくない?
聞きたいこと、というか、確認したいことは色々湧いてくるのだけど。

あ。

「猛家さん、ここ、ここに座りましょう」

店舗の前を歩く左右広めの通路のセンターには長い椅子だったりちょっと作業が出来るテーブルだったりが程よい間隔であった。

「あまり時間はないですが、ちょっとだけいいですか?」

「ありがとう」

渡されたソイラテを受け取りながら腰を下ろすことにした。

「あ、代金」

「いいです」

「でも」

歳上だし。ありがとうって奢ってもらうのも。

「急に引き留めたお詫びです、それもかなり強引にですから」

んー、押し問答するのも、時間が勿体ないか、な。事情がよく分からないままここは奢られておくことにしょうかな。

「では、遠慮せず、奢ってもらいます、次…」

あ、次は無いんだった。直ぐ、決まり事のように口をついて出てしまう。

「そう、次、会ったら奢ってください」

室井君は私の仕事事情なんて知らないから、また募集があれば店に来ると思ってるんだ。
それで、だ。引き留められてまで、何があるというのだろう。
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