禁じられた恋はその胸にあふれだす
記憶喪失の人
その日私は、昼間、店の買い出しに出かけていた。

田舎のメインストリート。

悠々自適に、一人で自転車をこいでいた。


「今日、買う物は卵、キャベツに玉ねぎ……」

そんな事を口に出しながら、ふと遠くに目をやった。

男の人が、一人でこのメインストリートを、向こう側からやってくる。

私は、その男の人に、興味を持った。


この田舎で、若い男の人は、数えるくらいしかいない。

その歩いている男の人は、その誰でもなかった。

どんな人なんだろう。

私は、目を凝らしてその人を見て、ハッとした。


頭から血を流していたからだ。

私は無意識のうちに、自転車を急いでこいで、その人に近づいた。

「大丈夫ですか⁉」

自転車を停め、その人の顔を覗く。

「えっ?」

その人は、私に急に話しかけられ、驚いている。
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