禁じられた恋はその胸にあふれだす
「俺だって、苦しいんだよ。一花に会えなくて。」


社会人になる時に、両親に一つだけ言われた事があった。

他の家庭を壊したら、ダメだよって。

今、まさにその通りじゃない。

「私の事忘れて。栞さんと幸せになって。」

「なれるか。今更。」


腕を捕まえられた訳じゃない。

抱き寄せられた訳でも、抱きしめられている訳でもない。

それなのに、突き放せない。

離れる事ができない。


「一花。一花、話を聞いてくれ。」

「何?」

「俺は一花を愛している。栞の事は、もう何とも思っていない。」

返事ができない。

「一花は?俺の事、どう思っている?正直に言って。」

どうしよう。

このままじゃあ、呑まれる。

「俺を愛してるって、顔をしているよ。」

次の瞬間、強く抱きしめられた。
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