禁じられた恋はその胸にあふれだす
「ありがとうございます。何から何まで。」

彼は食べ終わると、またニコッと笑った。


私は、大学を出て都会に就職した。

その時付き合っていた彼は、若い女の子と浮気して、私を捨てた。

それをきっかけに、生まれ故郷に戻って来て、貯金をはたいてこの定食屋を始めた。

人間、お腹が空いていると、碌な事を考えない。

逆に、お腹いっぱいになれば、なんとか生きていける。


「じゃあ、私。仕事があるので。」

「仕事って何ですか?」

「下の定食屋です。そろそろ、料理担当の人が来るので、店開けなきゃいけないんですよ。」

お昼の時間は、定食屋にとって、稼ぎ時だ。

「あの!」

彼は、真っすぐに手を上に伸ばした。

「何でしょう。」

「俺に手伝わせて下さい。」

「えっ?何で?」

私と彼は、顔を見合わせた。
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