天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
正直法律関係の仕事は壱生におんぶにだっこだ。だからそれ以外のことはできる限りのことをしてきた。
今回もその延長上で決して特別なことをしたつもりはない。けれどこういう形で感謝を伝えられるとやはりうれしいものだ。
だからこそ、この二年やってこれたんだろうな。
壱生は一見チャラくて軽く見られがちだ。実際に同じ事務所で働く純菜もそう思っていたし、そういう一面もある。けれどそれ以上に気遣いのできる人だ。
純菜が努力していることは褒めてくれるし、苦労していることは手伝ってくれる。この二年近くで過ごしてきて彼に対する見方は大きく変わった。
とはいえ……担当が代われるものなら代わりたいけど。
いまだに彼の熱烈なファンの事務所の女性陣や取引先の人から厳しい視線を向けられることがある。その視線に「なんでこの程度の女が」という蔑みを感じることも少なくない。
でも純菜は自覚していた。「この程度の女」だから彼のアシスタントが務まるのだと。
背ばかり大きくてそのコンプレックスが引き金になり、ずっと自分に自信がなかった。
学生の頃に恋愛で傷ついてそれがトラウマになり、恋やおしゃれなど年頃の女の子が経験するようなことは遠くから眺めているだけだった。
今も他人に不快感を与えないように清潔感を第一にした地味な服装しかしないせいで、ワードローブは黒とベージュとグレーで構成されている。
行動でも周囲に合わせるために常に気を遣っていた。失礼のないように嫌な思いをさせないように。そのおかげで周囲から浮くこともない。
ただなかなか本来の自分を見せることがないだけで、心の中では常にあれこれと考えているし理不尽なことに突っ込みを入れている。完全なる内弁慶。
しかし時折、壱生みたいな強烈な個性を前にすると素が出てしまうこともある。
その回数が最近増えてきたように思う。壱生もそれを楽しんでいてわざと純菜の感情をゆさぶっているのではないかと思うほどだ。
ここ最近は、よく週末食事に誘ってくる。それは本当に行こうと思っているわけではなく、純菜がどう断るのかを楽しんでいるようだ。
一度OKしたらどんな顔するだろうかと想像すると楽しくなる。
純菜もそんな環境を嫌だとは思っていない。もちろん壱生に直して欲しいところはたくさんあるけれど彼と仕事をするのは刺激的だった。
なんだかんだ言って、私も結構楽しんでるんだよね。
嫌だと思うことも多い。けれどそれ以上に得るものもある。
とにかく純菜の中にある壱生に対する思いは複雑なのだ。
今回もその延長上で決して特別なことをしたつもりはない。けれどこういう形で感謝を伝えられるとやはりうれしいものだ。
だからこそ、この二年やってこれたんだろうな。
壱生は一見チャラくて軽く見られがちだ。実際に同じ事務所で働く純菜もそう思っていたし、そういう一面もある。けれどそれ以上に気遣いのできる人だ。
純菜が努力していることは褒めてくれるし、苦労していることは手伝ってくれる。この二年近くで過ごしてきて彼に対する見方は大きく変わった。
とはいえ……担当が代われるものなら代わりたいけど。
いまだに彼の熱烈なファンの事務所の女性陣や取引先の人から厳しい視線を向けられることがある。その視線に「なんでこの程度の女が」という蔑みを感じることも少なくない。
でも純菜は自覚していた。「この程度の女」だから彼のアシスタントが務まるのだと。
背ばかり大きくてそのコンプレックスが引き金になり、ずっと自分に自信がなかった。
学生の頃に恋愛で傷ついてそれがトラウマになり、恋やおしゃれなど年頃の女の子が経験するようなことは遠くから眺めているだけだった。
今も他人に不快感を与えないように清潔感を第一にした地味な服装しかしないせいで、ワードローブは黒とベージュとグレーで構成されている。
行動でも周囲に合わせるために常に気を遣っていた。失礼のないように嫌な思いをさせないように。そのおかげで周囲から浮くこともない。
ただなかなか本来の自分を見せることがないだけで、心の中では常にあれこれと考えているし理不尽なことに突っ込みを入れている。完全なる内弁慶。
しかし時折、壱生みたいな強烈な個性を前にすると素が出てしまうこともある。
その回数が最近増えてきたように思う。壱生もそれを楽しんでいてわざと純菜の感情をゆさぶっているのではないかと思うほどだ。
ここ最近は、よく週末食事に誘ってくる。それは本当に行こうと思っているわけではなく、純菜がどう断るのかを楽しんでいるようだ。
一度OKしたらどんな顔するだろうかと想像すると楽しくなる。
純菜もそんな環境を嫌だとは思っていない。もちろん壱生に直して欲しいところはたくさんあるけれど彼と仕事をするのは刺激的だった。
なんだかんだ言って、私も結構楽しんでるんだよね。
嫌だと思うことも多い。けれどそれ以上に得るものもある。
とにかく純菜の中にある壱生に対する思いは複雑なのだ。