天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
第三章 俺の気持ちに応えて欲しい
第三章 俺の気持ちに応えて欲しい
枕元に置いたスマートフォンのアラームで目覚める。少し遅い起床時刻にまだ慣れずに「あ、遅れる」と思う事が何度かあった。
「あぁ。まだ慣れないな」
壱生の家で暮らすようになってから二週間。まだ見慣れない天井を見てぽそっと呟いた。
なんでこんなことになったのか。
時間があればふと思い浮かぶ感情を押し殺して「これでよかったのだ」と思い込む。
今日は仕事が休みの土曜日。いつもならもう少し寝ているのだけれど、今日は壱生とともに実家に向かう予定にしていた。
今週一週間、壱生は出張続きでほとんど家にいなかった。職場でも顔を合わせる機会があまりなく電話やメールで業務報告をする程度だった。
そのぶん……家ではゆっくりできたんだけど。
昨日の夜純菜がベッドに向かったときに、彼はまだ帰宅していなかった。諸々の案件が立て込んでいて、いつものことととはいえ忙しそうだった。
それに加えて実家のトラブルの件でも動いてくれている。そう思うと申し訳ない気持ちが沸き上がって来る。
「そうだ……とりあえず、朝ご飯作ろう」
食生活をないがしろにしているのは、引き出しの中に入っているカップ麺と空っぽの冷蔵庫を見て理解した。
今冷蔵庫の中には純菜が買ってきた食材がある。それを使って彼のぶんの朝ごはんも作ろうと思う。