天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
いったい誰のせいだと思っているのかと問いたい気持ちを押さえて、純菜はいただきますと手を合わせた。
向かい合って食事をするのは初めてではない。けれどいつもと違いなんだかくすぐったい。
ちらっと壱生の方を見ると、食事をする姿も優雅でみとれてしまう。ついついラップサンドが運ばれる口元に視線が向く。
私さっきまで……キスしてたんだ……。
ふとそんなことを思い出して、頭の中から壱生のことを追い出した。
そのとき足元に落ちていた小さなロープのおもちゃに気が付いた。
「ピッピ、ちゃんとご飯食べてますかね。いたずらばかりしてないといいんですけど」
おもちゃを拾うと、それで楽しそうに遊んでいた姿が思い出された。
昨日別れたばかりなのに、いや昨日別れたばかりだから寂しいと思うのだろうか。
純菜は小さなころから身寄りのない犬や猫の保護活動を両親と一緒にしていた。
その子たちとの別れも何度も経験しているのに、ピッピのことは特別寂しくまた不安に思う。
飼い主の乃亜の態度を知っているから、そう思うのだろう。
「ピッピのことは、本宮家の個人秘書の玉川(たまかわ)さんに頼んだ。仕事のできる信頼のおける人だ」
「そうなんですか! 実はちょっと心配だったんです」
安心してほっとした。
「本宮家のプライベートを管理している人だ。申し訳なさそうにしていたよ。彼女がうちにおしかけてきたこと」
わがままに育ったとはいえ、人に迷惑をかけていいわけではない。彼女の周りでそれをとがめる人がいないのであれば心配だが、きちんとそういう人がいるのであれば、きっとピッピのこともきちんと見てくれるはずだ。
「せっかく純菜の寝顔を堪能していたのに、朝から連絡がきてムカついた」
不機嫌に眉間に皺を寄せる壱生。しかし純菜はその表情を見て笑った。
「子供みたいなことで怒らないでください。でも壱生さんがちゃんとピッピのことを心配して向こうの方に連絡してくれてほっとしました」
「俺も心配だったからな。乃亜さんだけがピッピの世話をするなら、どんな手を使っても渡さなかった」
壱生がそうしただろうことは、純菜も理解できる。
「でも……さみしいですね、やっぱり」
「いたずらばっかりだったけどな」
壱生もピッピのことを思い出しているのか、ピッピがいつも寝ていたソファの上を見つめていた。
向かい合って食事をするのは初めてではない。けれどいつもと違いなんだかくすぐったい。
ちらっと壱生の方を見ると、食事をする姿も優雅でみとれてしまう。ついついラップサンドが運ばれる口元に視線が向く。
私さっきまで……キスしてたんだ……。
ふとそんなことを思い出して、頭の中から壱生のことを追い出した。
そのとき足元に落ちていた小さなロープのおもちゃに気が付いた。
「ピッピ、ちゃんとご飯食べてますかね。いたずらばかりしてないといいんですけど」
おもちゃを拾うと、それで楽しそうに遊んでいた姿が思い出された。
昨日別れたばかりなのに、いや昨日別れたばかりだから寂しいと思うのだろうか。
純菜は小さなころから身寄りのない犬や猫の保護活動を両親と一緒にしていた。
その子たちとの別れも何度も経験しているのに、ピッピのことは特別寂しくまた不安に思う。
飼い主の乃亜の態度を知っているから、そう思うのだろう。
「ピッピのことは、本宮家の個人秘書の玉川(たまかわ)さんに頼んだ。仕事のできる信頼のおける人だ」
「そうなんですか! 実はちょっと心配だったんです」
安心してほっとした。
「本宮家のプライベートを管理している人だ。申し訳なさそうにしていたよ。彼女がうちにおしかけてきたこと」
わがままに育ったとはいえ、人に迷惑をかけていいわけではない。彼女の周りでそれをとがめる人がいないのであれば心配だが、きちんとそういう人がいるのであれば、きっとピッピのこともきちんと見てくれるはずだ。
「せっかく純菜の寝顔を堪能していたのに、朝から連絡がきてムカついた」
不機嫌に眉間に皺を寄せる壱生。しかし純菜はその表情を見て笑った。
「子供みたいなことで怒らないでください。でも壱生さんがちゃんとピッピのことを心配して向こうの方に連絡してくれてほっとしました」
「俺も心配だったからな。乃亜さんだけがピッピの世話をするなら、どんな手を使っても渡さなかった」
壱生がそうしただろうことは、純菜も理解できる。
「でも……さみしいですね、やっぱり」
「いたずらばっかりだったけどな」
壱生もピッピのことを思い出しているのか、ピッピがいつも寝ていたソファの上を見つめていた。