夜を越える熱
部長室の外に出る。……
さっき通ってきたところを戻り、エレベーターホールに着いた。この時間、エレベーターを利用する人は多くない。
手に握りしめたペットボトル。
「なあ」
後ろから声をかけられて、エレベーターを呼ぶボタンを押そうとしていた手を止めた。振り返るとそこに今井が居た。
「こないだの子だよね。顛末書。何やったの」
どこかへ行く途中で藍香を見つけたのか、手には書類を持っている。
「あ……今井さん、ですよね」
確かめるようにそう尋ねると、そうだよ、と今井は答えた。
「まさか同じ職場だとは思わなくて驚きました……。こないだはありがとうございました。私、河野藍香です」
「名前は知ってるよ」
「え?」
「あの日みんな自己紹介したじゃないか」
そう言われると図星だった。ぼんやりしていて出会いを求めていなかった藍香は人の名前も覚えていない。それを今井は理解した様子でもう一度名を教えてくれた。
「俺は今井恭佑。なあ、何やらかしたんだ?」
さっきの機械的な感じと違う。見知らぬ高松の手前だからああだったのか、仕事だからなのか分からないが。
誰もいないエレベーターホールで雑談する今は、何となくあの夜のように話しやすい。
さっき通ってきたところを戻り、エレベーターホールに着いた。この時間、エレベーターを利用する人は多くない。
手に握りしめたペットボトル。
「なあ」
後ろから声をかけられて、エレベーターを呼ぶボタンを押そうとしていた手を止めた。振り返るとそこに今井が居た。
「こないだの子だよね。顛末書。何やったの」
どこかへ行く途中で藍香を見つけたのか、手には書類を持っている。
「あ……今井さん、ですよね」
確かめるようにそう尋ねると、そうだよ、と今井は答えた。
「まさか同じ職場だとは思わなくて驚きました……。こないだはありがとうございました。私、河野藍香です」
「名前は知ってるよ」
「え?」
「あの日みんな自己紹介したじゃないか」
そう言われると図星だった。ぼんやりしていて出会いを求めていなかった藍香は人の名前も覚えていない。それを今井は理解した様子でもう一度名を教えてくれた。
「俺は今井恭佑。なあ、何やらかしたんだ?」
さっきの機械的な感じと違う。見知らぬ高松の手前だからああだったのか、仕事だからなのか分からないが。
誰もいないエレベーターホールで雑談する今は、何となくあの夜のように話しやすい。