夜を越える熱
熱を帯びた視線に見つめられ、その力に吸い込まれそうになる。



求められている──そう感じる。



藍香自身を強烈に求めているのが伝わってくる視線。さっき抱き締められ、軽く唇を重ねられた感覚がじわりと身体を熱くした。



藍香の意識に反して、勝手に熱くなった身体の中心が疼きを訴える。


戸惑う。


求められているというひどく甘い感覚の中で戸惑いが増大し、どうするべきか分からない自分がいる。




今井の目を見返すことが出来なくなった。




頬を染めて思わず目をそらした藍香に、今井の静かな声が続けた。




「もう一度言う。藤崎さんは藍香には無理だ。やめておけ」



『やめておけ』



それは藍香が自分自身に言い続けてきた言葉だった。松岡のことで一人で悩み、彼に恋人が出来てからも毎日のように自分に言い聞かせてきた。そうやって自分を止めてきた。


そして最後まで………止まったままになったと思う。





顔を上げる。


「…………無理だなんて言わないで。私は次は後悔しないようにするって決めたの。釣り合わないなんて今井さんに決められたくない。」




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