夜を越える熱
過去
部屋の外に出たとき、書類を手に持った人影がドアの外で待っていた。
「……今井さん」
今井がこちらを見ている。一瞬藤崎との会話を聞かれたかと考えた。
「…俺、今ここに来たばかりだから。藤崎さんと何話ししたの」
静かな声で聞かれた。それに答えられない。
─藤崎さんに好意が伝わりました……嬉しいはずなのに、どうしてか不安なんです。
そう言いたくなった。
けれどそれは言葉にならない。
今井には『やめておけ』と言われていることは分かっている。
同時に、昨夜黙って抱き締められた記憶が蘇った。
瞳で訴えようとしたまま、ついにそれが言葉になることは無かった。
「……お疲れ」
今井はそれだけ言うと書類を持ち、まだ開いたままのドアをノックする。
「失礼します」
慣れたように部長室へと消えた。
「……今井さん」
今井がこちらを見ている。一瞬藤崎との会話を聞かれたかと考えた。
「…俺、今ここに来たばかりだから。藤崎さんと何話ししたの」
静かな声で聞かれた。それに答えられない。
─藤崎さんに好意が伝わりました……嬉しいはずなのに、どうしてか不安なんです。
そう言いたくなった。
けれどそれは言葉にならない。
今井には『やめておけ』と言われていることは分かっている。
同時に、昨夜黙って抱き締められた記憶が蘇った。
瞳で訴えようとしたまま、ついにそれが言葉になることは無かった。
「……お疲れ」
今井はそれだけ言うと書類を持ち、まだ開いたままのドアをノックする。
「失礼します」
慣れたように部長室へと消えた。