夜を越える熱
知らない人なのに申し訳ない。



心のどこかでそう思いつつも、一気に溢れ出てしまった自分の感情をコントロール出来なかった。



涙が止まらない。


みっともないと思いつつも、もう会わない人だからと涙で濡れた顔を上げた。


「……私、……帰ってもいいかな………」


この場には居られなかった。




誘ってくれた美桜にも見られるわけにはいかなかったし、周りに見られたら雰囲気をぶち壊すことも分かっていた。



それに何より、一人で泣きたかった。




こんな綺麗な夜に一人で居なくて良かった、寂しいだけだから。



そう思ったけれど、今は一人で闇に沈みたいと願ってしまう。



「………良いんじゃない。適当に誤魔化しといてあげる。……帰りなよ」


涙が止まらない藍香を見ながら、見知らぬ男性はそう言った。














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