夜を越える熱
「帰るよー」

吉田に連れられて藍香と今井は店の外に出た。

美桜と宮地は意気投合したらしく、どこかへ二人で行くと言うので残りの俺たちは帰ろうとの提案だ。

「俺、仕事中だったんだけど……」

三人で階段を降りたところで今井がぽつりと言う。


「来て良かったはずだよ。ねえ、河野さん」

ポケットに手を突っ込んだままで吉田は急に藍香に話を振る。


「…今井さんは心配して来てくれたんですよね」



「そうそう。それにさ。今井、河野さんはキスされてからお前のこと気になって仕方ないって話してたよ」


「!」

藍香は驚いて吉田の方を見る。

「じゃあね。今度奢ってな」


そう今井に言うとひらひらと手を振って吉田は夜の街に消えて行った。






残されたのは二人。



夜の街中。喧騒が耳に響く。



「………あいつが何で知ってるかは別として。今の話。本当?」


いつの間にか今井が目の前に居て、藍香を見つめていた。


「…はい…」


正直にそう答えると、今井は少し笑ったように見えた。


「……キスして、嫌われたかと思った」




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