夜を越える熱
ひっそりと誰にも分からないように藍香は店を後にした。


もしかすると帰るところを誰かに気づかれるかもしれないと思ったけれど、そんなことを気にしている場合ではなかった。

バッグを掴むと男性にぺこりと少しだけ頭を下げる。そしてそのままその場を後にしたのだった。



急に爆発した後悔と悲しみで、目の前が見えなくなって、全てのものがどうでも良かった。





一人になれる部屋へと足早に帰宅しつつ、誘ってくれたのに黙って帰ってしまったことでの友人への罪悪感と、誤魔化しておいてくれると言ったあの知らない男性に申し訳なかったとちらりと胸が傷んだ。









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