夜を越える熱
─……恭佑……ここで待ってたの?



そう問う前に恭佑の方が口を開いた。



「もしかして今日は帰されないかと思った」



藤崎さんに、という意味だ。




連絡して、と言った恭佑の言葉は覚えていた。






「……昼間、藤崎さんのところに行って私のことを訊いたの?」




恭佑はそうだとも違うとも何も言わない。


ただ柱に寄りかかったまま、瞳を向けてくる。


それが肯定の返事だと思えた。






「……恭佑の思惑通り、帰らされたの…。そうなって欲しかったんだよね」


恭佑が昼間取った行動の意味は分かってる。






彼の眼差しを見ていると、じわりと伝わってくるその熱で次第に焼かれてしまいそうになる。




昨夜の熱い夜のことが脳裏に浮かんで、急に身体と思考が激しく混乱した。


< 91 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop