夜を越える熱
ガラス扉をくぐり抜けたあと、後ろで再びロックのかかる音がした。




ゆっくりと手を離した恭佑はエントランスから追っては来なかった。







…………………………


『また、お会いしたいです』





車から降りる前に藤崎に何とかそう伝えた。


返事はない。



沈黙の中で、バッグから取り出したメモに携帯電話の番号を走り書きした。




『ご迷惑になるなら、もう部長室へは行きません。私の連絡先です。藤崎さんが良い時に連絡してください』



そう言ってメモを運転席の方へ向けた。




受け取られないメモ。





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