夜を越える熱
──帰ったみたい。


30分以上経って、エントランスに戻ってみた。


さっきいたところに恭佑の姿はない。



自分がほっとしたのか、寂しい気持ちになったのか、複雑な気持ちだった。



『俺の側にいて』



恭佑の言葉。



戻ろうとしたときに、壁側の隅に黒い影を見つけた。



「………ここで寝るの?」



壁に沿って無造作に床に座り、天を仰いだように頭を壁にもたせかけて目を閉じている。隣にビジネスリュックもそのまま投げ出してあった。





恭佑は目を開けた。



「……こんなところで寝てたら変に思われるから……」



すぐに目を開けたところを見ると、寝ていたわけではないのは分かった。



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