カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
[1]
「ア……ナ、ログ……さん??」
「……え?」
つい声に出してしまった。
『アナログ』なんて苗字、見たことも聞いたこともなかったからだ。
「あ……それは初めて呼ばれた「読み間違い」ですね。「聞き間違い」でしたら、『ナグモ』などは良くありますが」
その名を綴っていた綺麗な指先がふと止まる。
斜め上から苦笑いを含んだ柔らかな声が降り注ぐ。
ワタシはハッと我に返り、その声の主へと顔を上げた。
「ご、ごめんなさいっ。知ってる人に似てたから、ちょっと名前が気になって……」
慌てふためき謝ったワタシの頬は、一瞬にして熱を感じていた。
そう、まさしく「顔から火が出る」みたいに。
それは読み方を間違えたからではなく、彼の書類を覗き見たことに気付かれてしまったからだ。
見上げた先にある見覚えのある顔が、「いえいえ、お気になさらず」と言うふうに首を傾げて微笑む。
細い銀ブチ眼鏡の向こう、優しそうな瞳がほんのりと弧を描いていく。
「……え?」
つい声に出してしまった。
『アナログ』なんて苗字、見たことも聞いたこともなかったからだ。
「あ……それは初めて呼ばれた「読み間違い」ですね。「聞き間違い」でしたら、『ナグモ』などは良くありますが」
その名を綴っていた綺麗な指先がふと止まる。
斜め上から苦笑いを含んだ柔らかな声が降り注ぐ。
ワタシはハッと我に返り、その声の主へと顔を上げた。
「ご、ごめんなさいっ。知ってる人に似てたから、ちょっと名前が気になって……」
慌てふためき謝ったワタシの頬は、一瞬にして熱を感じていた。
そう、まさしく「顔から火が出る」みたいに。
それは読み方を間違えたからではなく、彼の書類を覗き見たことに気付かれてしまったからだ。
見上げた先にある見覚えのある顔が、「いえいえ、お気になさらず」と言うふうに首を傾げて微笑む。
細い銀ブチ眼鏡の向こう、優しそうな瞳がほんのりと弧を描いていく。
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