カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
「えーと……てことは、この斜めの線に置いた点が、もし「2.183547……」みたいな数値だったとしても、デジタル化したら「2」ってこと?」

「そういうことです」

 アナログさんはワタシの意外に速い理解に、満足げな笑みを浮かべた。

 対してワタシはアナログさんの持つ知識への「感心」と、今までに感じたことのない自分の中に芽生えた言葉への「関心」に驚いていた。
 
「世の中のはかりきれない地点を無理やり数値化するのがデジタルです。悪く言えば「大ざっぱ」ですが、良く言えば曖昧(あいまい)で伝えられなかった物を「具現化」出来る、とても便利な法則の一つですね」

「なるほどぉ……」

 手の届く範囲にあるありきたりな言葉たちが、アナログさんの唇を通すことによって、まるで新鮮な風となり吹き抜けた気持ちがした。

「あ、でもホントに『名は体を表す』のかもね? ワタシは『デジタル』の通り「大ざっぱ」。『アナログ』さんもその名の通り、きっと物事を細かく見られてるんだもん」

「……そうでしょうか?」

 「そうだよー」と目を細め笑うワタシに、けれどこの時のアナログさんはどこか(もの)()げな笑顔で、先程のようにワタシの鏡とはならなかった──。


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