カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─

[9]

 回廊みたいな室内は、以前と全く変わった様子はなかった。

 整頓された家具や調度は、清潔感すら(うかが)える。

 けれど大きな窓から見える中庭は、木々が鬱蒼(うっそう)として先を見通せなかった。

 まるで「いらっしゃい」と言わんばかりに置かれたサンダルに足を通し、淡い陽光が射し込む林を抜ける。

 繁みに囲われたような小さな広場にポツンと一つ、幅広い(とう)製の椅子が向こうを向いて置かれていた。

「ハクア、くん……?」

 背もたれの上部から浮かんだ──いや、椅子から立ち上がったのだ──後ろ姿がこちらへ振り向く。

「──ハクアくんっ──!!」

 四年前と変わらない柔らかな微笑み、もう三十歳を越えた筈なのに……眼鏡を掛けていないということ以外、どうしてだか一寸も変わらないその容貌へ向け、ワタシは思わず駆け出していた。

「どっ、して──」

「ゴメンね、ミノリさん。でも……説明する前に……もう、ちょっと、我慢出来ないから」

 ──……えっ?

 勢いに任せて抱きつこうとしたワタシを受けとめた、だけでなく、ハクアくんはワタシの腰に手を回して抱き上げ、くるりとワタシごと藤の椅子に腰かけた。

 そして──


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