カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
「んっ……ふ……──」

 驚きと初めて味わう感覚に、つい吐息が(こぼ)れてしまう。

 ワタシの唇に押しつけられていたのは……ハクアくんのそれだった。

 長く激しい、甘いくちづけ。

 もちろんファースト・キスなんてとっくの昔に経験済みだし、もう何人かの彼と数えきれないほどのキスをした。

 なのに何だろうこの感触は……自分の奥底から湧き上がる何かが、繋がった唇から吸い取られていくような……未知の官能が全身を打ち震わせる。

「ハ……クア、く……ん?」

 やっと会えた。やっと触れることが出来た。

 だからこそ、このキスをやめてほしくなんてなかったけれど。

 声すら抜き取られてしまったような錯覚に(おちい)って、ワタシは弱々しく彼の名を呼んだ。

 情熱的だった接吻(せっぷん)がゆっくりと止まる。

 深く息を吐き出したハクアくんは、落ち着きを取り戻したように一度口元を引き締め、それから伏し目がちに語り出した。


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