カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─

[11]

 ワタシは初めてワタシから、ハクアくんに口づけた。
 
「ありがとう、ミノリさん……あと、ちょっとだけ……堪能出来たら、ちゃんと、解放するから……」

 触れたまま語る唇は、まるで名残惜しそうであったけれど。

 ハクアくんが心からワタシを(いた)わってくれているのが感じられた。

「ね、ハクアくん……ワタシって……美味しい?」

 自分でも大胆な台詞(セリフ)だと思ったせいか、ハクアくんも少し驚いたみたいだった。

「四年振りに再会した貴女は、見事「穂が垂れる」ほどに「(みの)り」を迎えていました。ですから……「絶品」と言ったら……失礼でしょうか?」

「ううん、むしろ光栄」

 期待通りの嬉しい答えに笑顔で(こた)えたけれど、実のところ褒められる自信はあった。

 だってこの四年、ワタシはハクアくんにとっての「イイオンナ」になりたくて、一瞬一瞬を精一杯生きてきたのだもの!

 ワタシはハクアくんの(おとがい)を両手で包み込んで、放心する身体に力を込め、再びキスをした。

「……ミノリさんに会う前に味わった感覚も、海外での四年間に味わった感覚も……今このひとときにはまるで(かな)わない……」

「うん……ん……」

 ハクアくんが年齢よりもずっと見た目が若いのは、もしかしてこの行為の賜物(たまもの)なのかも知れないと悟った。


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