カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
「お待たせしました。……甘いものがお好きなんですね?」

 目の前に腰掛けた(まな)()しが、テーブルに積まれたお釣りの隣、ピンク色の細長い紙パックに落ちる。

 ストロベリーミルク味。

 もう半分はワタシの胃の中だ。

「「甘いもの好き」じゃないJKなんて可愛くないでしょ? 『アナログ』さんは甘いものが苦手なの? それとも大人を演出しているつもり?」

 彼が買ってきたのはブラックコーヒーだった。

 男性として大人として、コーヒーはアリとしても、柔らかい表情や物腰から連想してみれば、ミルクの入ったカフェオレの方がお似合いだと思っていた。

「お(しゃべ)りするなら、飲み物はスッキリしたものが良いかと思いまして。甘いものも嫌いではないですよ。それより学校が終わるにはまだ早いのではないですか?」

 やっぱりね、ココで来ましたか──その質問に軽く口を(とが)らせてみせるワタシ。

「今日は期末で早く終わったの。図書館は休館日だし、さっさと帰ろうと思って~」

「それは失敬。では僕になど付き合わせている場合ではありませんね」

 ワタシの事情を悟った彼は、咄嗟(とっさ)に席を立った。

 明日も期末テストの続きがあると、勉強の邪魔をしてはいけないと考えたのだろう。

「え? あっ、もう今日で終わったから! 今回はインフルで学級閉鎖とかもあって、月曜まで食い込んじゃったのっ」

 吊られて立ち上がったワタシは、思わず彼の腕に手を伸ばして釈明をした。

 つい袖を引く力と語気が強くなってしまったのは……えーと、何でだろう?

 そんなに彼を引き留めたいと思った『理由』って??


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