カフェオレ色のアナグ・・・ラ[ブ=]無 ─ Anagram ─
[3]
「では僕から。名前はハクア、です。ナグロ ハクア、ちなみに二十六歳」
「ハ、クア??」
止まってしまった時を動かしたのは、彼の透き通る声だった。
が、苗字だけでなく名前の珍しさに、ワタシは今一度時を止める。
彼は困ったように微笑みを揺らして、隣の椅子に置いていたファイル・ケースから、手帳とペンを取り出した。
「こう書きます……『名黒』、『白亜』」
広げた白紙のページに、スラスラと黒く達筆な四文字が綴られてゆく。
「そう言えば左利きなんだー」とワタシはぼんやり思った。
カタカナから漢字に変換された文字は、目から脳へ到達する間に、得体の知れないモノから、とても馴染みのある活字の集まりに変わった。
「アナタのご両親って恐竜博士とか?」
「いいえ。白亜紀をご想像なのでしょうが、身近な物でしたら……例えば『チョーク』のことですよ」
「チョーク!?」
驚きが辺りに反響し、通りすがりのご婦人が怪訝そうに振り返った。
ワタシは慌てて両手で紙パックを持ち上げ、ストローを口に突っ込んだ。
「ハ、クア??」
止まってしまった時を動かしたのは、彼の透き通る声だった。
が、苗字だけでなく名前の珍しさに、ワタシは今一度時を止める。
彼は困ったように微笑みを揺らして、隣の椅子に置いていたファイル・ケースから、手帳とペンを取り出した。
「こう書きます……『名黒』、『白亜』」
広げた白紙のページに、スラスラと黒く達筆な四文字が綴られてゆく。
「そう言えば左利きなんだー」とワタシはぼんやり思った。
カタカナから漢字に変換された文字は、目から脳へ到達する間に、得体の知れないモノから、とても馴染みのある活字の集まりに変わった。
「アナタのご両親って恐竜博士とか?」
「いいえ。白亜紀をご想像なのでしょうが、身近な物でしたら……例えば『チョーク』のことですよ」
「チョーク!?」
驚きが辺りに反響し、通りすがりのご婦人が怪訝そうに振り返った。
ワタシは慌てて両手で紙パックを持ち上げ、ストローを口に突っ込んだ。