淡く、幼く、頼りなくて、あっけない
淡く、幼く、頼りなくて、あっけない
実家にある勉強机の引き出しで、プラスチックの小さなケースを見つけた。その中に入っていたのは白い糸くずが絡みついた半透明のボタンだった。
わたしは懐かしさに目を細める。
さらに引き出しからは中学生の頃使っていたネームプレートと、校章や学年章がいくつも出てきた。
わたしが通っていた中学校では、好意を持った異性からは第二ボタンを、先輩や友人からは校章や学年章をもらうというイベントがあった。加えて、両想いになればネームプレートを交換したりもする。
この大量の校章や学年章は、中学時代のわたしが、大勢の先輩や友人たちからもらい受けた証拠だ。
そしてその中に制服のボタンらしきものはなく、自分のネームプレートが残っているということは、中学時代のわたしが、誰とも両想いになれなかった証拠だった。
あの頃。第二ボタンをもらいたい相手はいた。もっと言うならネームプレートだって交換したかった。でもわたしはどちらも手に入らないことが分かっていた。あの頃好きだった彼には、もうボタンを渡し、ネームプレートを交換する相手がいたからだ。
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