淡く、幼く、頼りなくて、あっけない

 ぶっきらぼうなあいつは、元気でやっているだろうか。
 高校も別だったし、大学は県外で、成人式にも出席していない。県外で就職してからは数えるほどしか帰省できず、高校時代の友人たちならまだしも、中学時代の同級生との縁は、すっかり切れてしまっている。

 でももし今また会うことができたら、あの頃のことを笑って話せるだろうか。卒業式の日に、有無を言わせず差し出したシャツのボタンの意味を、聞き出せるだろうか。そしたらあいつは、はぐらかさずにちゃんと答えてくれるだろうか。

 そんなことを考えてふっと笑って、シャツのボタンをケースに入れ、元あった場所にきちんと戻すと、荷解きを再開した。

 もう春は目の前。新しく、でも懐かしい生活が始まるのだ。




(了)
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