線香花火の初恋【短編】
絶句した。視線は縫いつけられるような、絡めとられるような目線だったけど、言葉は私と同じようなものだったなんて。あまりの衝撃に放心していると、どんどん岸田君の表情が苦々しく歪んでいき最後に獰猛な猛禽類みたいな目に変貌した。

「わかった」

その一言がこれほど恐ろしかったことはあるか。
手を握られ、クラス委員の所に二人で向かう。頭がぐちゃぐちゃでなにも考えられない。

「委員長、ごめん。花本気分悪いから送ってくわ」

委員長はびっくりして、私のほうを見ると困ったように「大丈夫?」って優しくきいた。
私はどうしていいかわからず、小さく頷いた。

ずんずん歩いていくのは、私の家でないことがわかった。全くの真反対。

「どこに行くの?」

「俺んち。大学下宿なんだよね。この高校も実家から遠いし」

無機質に答えられた。
そして猛禽類が捕食するように、見下ろして。

「逃がさないから」
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