線香花火の初恋【短編】
ただ、本当に話したことがなかった。
いつも大人しそうな女子のグループにいて全く持って接点がない。
クラスメイトのうるさい女とはいくらでも話せるのに、彼女に同じように絡むのは気が引けた。あと、その時、別れる寸前の彼女がいた。
彼女はサッカー部のマネージャーで、入学して二か月くらいで告白された。舞い上がった俺は、すぐさま告白を了承し、交際を続けていたが彼女はなかなか股の緩い女で、他校に俺と同じように付き合いをしている男がいた。問い詰めると鬱陶しそうに、詰るような目線を投げかけてきた。
「あんたも似たようなものじゃない」
口の端が、片側だけ吊り上げて吐き捨てるように言った。その言葉に理解ができなくて、すぐさま言い返すことができなかった。
「私が告白する男は、大体、他の女に恋してる男なのよ」
鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。その時初めて、花本に恋をしていると気づいた。彼女から自分の恋心を気づかされるなんて、とんでもなく情けない。彼女は容赦なく続けた。