私の恋心と彼らの執着

『ゆかり……』

 初めて名前を呼ばれた時のときめきは、今でも思い出せる。
 心臓が本当に、とくんと音を立てた気がした。

 名前を囁かれながら、可愛いと、好きだと告げられながら長い指が肌に触れていく感触は、それまでに知らないものだった。
 ……私は、初めてだったから。本当に何も知らなかった。

 舌を絡め合う口づけの心地良さも。
 唇に首筋を、胸元を舐められながら吸われていくこそばゆさも。
 潤った場所に触れられ、膨らんだ蕾を捏ねられる刺激も。
 熱い杭に奥まで暴かれて、深い所をえぐられる痛みと快感も。

 何も知らなくて、途中で何度か逃げたくなったけど、彼のリードは少し強引ながらも優しくて、私に行為のすべてを教えてくれた。
 重苦しいほどの性感が全身を駆け上がって、絶頂の領域にたどり着くまで。


 ──はじめは、好意を感じての行いだったのだ。
 私はもちろんのこと、彼もそのはずだった……と思う。
 初めての私を気遣いながら、二度、三度と抱いたあの仕草は、逃げることを許さない空気はあったけど、優しくもあったのだ。

 許されない行為だという自覚は、最初からあった。
 課長が既婚者で、子供のいる父親であるのを失念していたわけではない。

 けれど抱かれる時は、故意に忘れた。
 この人は自分だけのものだと、限られた時間だけでも思っていたかったから。
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