私の恋心と彼らの執着
彼も、逢瀬の時はそんなふうに思ってくれていたはず。
少なくとも私はそう信じている。
何度となく、可愛いと、好きだと囁いてくれたのは。
その場の雰囲気だけじゃなかった──と思いたい。
けれど、三ヶ月、半年と続くうちに。
初めに持っていた情熱は少しずつ冷めていった。
お互いに、現実の方が、心の中で大きくなっていったのだろうと思う。どれだけ美化しようと強く求めようと、これは不倫なのだと。
紀野課長は妻も子もいる、れっきとした既婚者。
私は、それを知っていながら関係を持った女。
……その事実は何をどうしようと、動かしようも消しようもない。
今はもう、かたちだけだと知っている。お互いに。
それなのに──いや、だからこそなのだろうか。
お互いの身体を求め始めると、いつも抑えられない感情が湧いてくる。
相手を貪って食い尽くして、めちゃくちゃにしたくなる。そんなふうに激しく身体を繋ぎ合わせ、溶け合う。
そして終わると一転、興味をなくしてしまうのだ。
……少なくとも、彼の方は。
今夜も、そうだった。
身体の隅々までを舐め尽くすように抱き合い、交わった。
そんな濃厚な行為をしても、互いの頭はすぐに、現実を思い出す。
ベッドに腰掛けて煙草を吸いながら、いま思い出した、という口ぶりで彼が話し出した。