私の恋心と彼らの執着
「いつから、たばこ替えたの」
「へ? ……ああ、最近な。今まで吸ってたのが生産中止になっちまったから、適当なやつ選んで。なんで?」
「別に、──前と違うなあって思っただけ」
それで話は済むと思った。
けれどそもそも、尋ねない方がよかったのだと気づいたのは、すぐ後。
一度も振り返らずに会話した私の様子を、文隆は訝しんだらしい。
「何だよ、変なやつだな」
「だから何でもないって」
「…………」
無言で、後ろに迫ってくる気配がする。
キッチンユニットに右手が置かれるのが、視界の隅に入った。
「あいつと同じタバコだったのか、もしかして」
「あいつって?」
「とぼけんなよ。課長だろ、おまえが今考えてる奴は」
「……何も、考えてないわよ」
水道の栓を締め、手を振こうとした瞬間、いきなり身体が反転した。
文隆が無理やり、私を自分の方に振り向かせたのだ。
私の腕をつかんで見下ろす文隆は、なんだか怖い表情をしている。
──この表情を、私は前に、見たことがある。
「な、何よ」
「いつまであいつと付き合ってるつもりなんだよ」
「──あんたに、関係ないでしょ」
わざとそらした顔を、顎をつかまれて上向かされる。
その手の力が、痛みを感じるくらいに強い。