私の恋心と彼らの執着
羨まれるのは嫉妬も入っていたからちょっと複雑ではあったけど、おおむね誇らしかった。
課長が仕事のできるエリートなのは前評判通りで、前の課長から引き継いだ常連客だけでなく、難しいと言われた新規の顧客もバンバン契約し、注文を取ってきた。だから仕事としてはかなり忙しかったけれど、やりがいはあった。
課長に触発される形で、他の営業部員もそれまで以上に仕事を取ってくるようになった。おかげで営業部の成績は、前年度と比べると桁違いの数字を記録したのだった。
(私の忙しさを目にして、同僚の嫉妬混じりの羨望がだんだんしぼんでいったりしたのは、副産物だ)
実績が伸びたのは課長の実力、そして部員の頑張りの賜物である。けれど紀野課長は、裏方役の営業事務をねぎらうことも決して忘れない人だった。
大口の注文が入れば必ず担当営業と込みで褒めたし、月に一度は部員を引き連れての飲み会を企画した。費用は課長が折半する形で。
課長のそんな気遣いに、部員はますます、課長に心酔するようになった。
その年度の社内表彰式では、営業部が功労賞と特別賞を同時に受賞したのだ。
そんな紀野課長を直接サポートできる立場は、自慢だった。
忙しくてもそれだけの見返りはある仕事を、私なりに精一杯やっていたのだ。
──けれど、ある日。
私のミスがもとで、課長に恥をかかせる結果となってしまった。