いけすかない男
京香が営業部に書類を届けに行くと、市原が対応に出てきた。
「さっきはどうも」
「あ、どうも。この間の二次会盛り上がったみたいですね」
「ああ、佐々木さんだけ先に帰ったもんね」
お前のせいだよ、と言ってやりたい気持ちだった。
「そうなんです。次の日予定があったので」
「そっか。じゃあもしよかったら、今夜飯でも行かない? この前はあんまり喋れなかったし」
「え? あ……はい」
京香は咄嗟に適当な断り文句が思い浮かばず、はい、と返事していた。てっきり自分は、感じの悪い女だと思われていると思っていた京香は、突然の誘いに戸惑っていた。
「じゃあ終わったら連絡して」
そう言われ、市原から名刺を受け取った。
京香は自分のデスクに戻ってしばらく考えていた。
市原から食事に誘われるのは、どう考えてもおかしいのだ。
「この前はあまり喋れなかったから」と市原は言ったが、どうも釈然としなかった。
京香は、あの日の市原の言葉を思い出した。
"女だって普通に浮気すんじゃん"
それはまるで経験者かのような口振りだった。
もしかすると自分がそれの対象なのではないか、と京香は市原に疑心を抱いた。
「さっきはどうも」
「あ、どうも。この間の二次会盛り上がったみたいですね」
「ああ、佐々木さんだけ先に帰ったもんね」
お前のせいだよ、と言ってやりたい気持ちだった。
「そうなんです。次の日予定があったので」
「そっか。じゃあもしよかったら、今夜飯でも行かない? この前はあんまり喋れなかったし」
「え? あ……はい」
京香は咄嗟に適当な断り文句が思い浮かばず、はい、と返事していた。てっきり自分は、感じの悪い女だと思われていると思っていた京香は、突然の誘いに戸惑っていた。
「じゃあ終わったら連絡して」
そう言われ、市原から名刺を受け取った。
京香は自分のデスクに戻ってしばらく考えていた。
市原から食事に誘われるのは、どう考えてもおかしいのだ。
「この前はあまり喋れなかったから」と市原は言ったが、どうも釈然としなかった。
京香は、あの日の市原の言葉を思い出した。
"女だって普通に浮気すんじゃん"
それはまるで経験者かのような口振りだった。
もしかすると自分がそれの対象なのではないか、と京香は市原に疑心を抱いた。