いけすかない男
何となく後ろめたさがあって、淳子には話していなかった。
食堂や廊下で市原とすれ違うことはあったが、お互い「お疲れ様です」と挨拶するだけだった。二人の関係が秘め事のようで、余計淳子に言い辛くなっていた。
淳子の方は、営業部の守屋争奪戦を勝ち抜き、めでたく交際を始めた。
不倫ともとれそうな市原との関係を、京香から淳子に話すことはないが、市原が守屋に話さないとも限らない。京香はそれを懸念していた。
今回も、市原が予約していた店に行くことになった。
前回とはまた違った、アジアンテイストのゆったり寛げるお洒落な店だった。
「市原さん素敵なお店たくさん知ってるんですね」
「そんな事ないよ。色々検索したんだ」
市原は照れ笑いを見せた。
「飲み会だったら居酒屋にするけど、こっちから女性を誘っておいて居酒屋じゃ失礼だろ?」
「えー、全然! 私、居酒屋が似合う女ですから」
「何だよそれー」
市原は子供のようにあどけなく笑った。
この人は本当に、あの日の市原と同一人物だろうか。あの日市原は、悪酔いでもしていたのだろうか。
京香の頭はますます混乱した。
食堂や廊下で市原とすれ違うことはあったが、お互い「お疲れ様です」と挨拶するだけだった。二人の関係が秘め事のようで、余計淳子に言い辛くなっていた。
淳子の方は、営業部の守屋争奪戦を勝ち抜き、めでたく交際を始めた。
不倫ともとれそうな市原との関係を、京香から淳子に話すことはないが、市原が守屋に話さないとも限らない。京香はそれを懸念していた。
今回も、市原が予約していた店に行くことになった。
前回とはまた違った、アジアンテイストのゆったり寛げるお洒落な店だった。
「市原さん素敵なお店たくさん知ってるんですね」
「そんな事ないよ。色々検索したんだ」
市原は照れ笑いを見せた。
「飲み会だったら居酒屋にするけど、こっちから女性を誘っておいて居酒屋じゃ失礼だろ?」
「えー、全然! 私、居酒屋が似合う女ですから」
「何だよそれー」
市原は子供のようにあどけなく笑った。
この人は本当に、あの日の市原と同一人物だろうか。あの日市原は、悪酔いでもしていたのだろうか。
京香の頭はますます混乱した。