ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「試着はしていただきませんと」

「試着?」

「ええ。私が代わりに試着するわけにもいきませんし」

 すると、彼は「君が試着?」と言ってフッと笑った。

 朝井様も笑ったりするんですねと思わず感心するが、今はそれどころではない。なんとしてでも本人に選ばせないと。

「ええ。体形に合わないスーツでは、ちょっと問題かと」

「そりゃそうだ。じゃあ、業者を呼んでくれればいいから。よろしく夕月さん」

 あっ、と言う間もないドアは無情にも閉じられて。伸ばした私の手は宙を彷徨った。

 嘘でしょ。選ぶにしても情報が少なすぎですよ。

 言いたいことは山とあるが唖然としてはいられない。腕時計を見れば現在午後の二時。今日中となると時間の余裕はない。

 足早にコンシェルジュの先輩のいるカウンターに向かった。



「そう。わかったわ。外商に来てもらいましょう」

 私の尊敬するコンシェルジュの由紀さんは迷わずにそう言った。

「さすがです由紀さん」

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