ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 だから優斗には、この婚約が契約によるものだとは絶対に知られちゃいけない。

「それで桜子、仕事はいつまで続けるの?」

「ん? 仕事は辞めないよ?」

「でもそれじゃすれ違い生活じゃないの。お互い不規則勤務なんだし」

「まあそうだけど、すれちがいくらいでちょうどいいのよ。それに私がコンシェルジュになりたいっていう夢を彼も応援してくれているの」

 それは本当だ。

『君はいいコンシェルジュになれると思う』

 がんばってと言ってくれた。

 それはそうだろう、私は婚約者ではあっても彼と結婚するわけじゃないし。

「桜子ったら、なんだか随分クールじゃない?」

「そう?」

 私はふふっと微笑んで見せた。

 だって気持ちをセーブしているもの。一年間は長いから、今はまだ彼を好きになっちゃいけないってね。

 今は恋に恋しているだけ。

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