ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 両親は興味津々とばかりに手を止めて小池を見る。

「ちょうど部屋に入ろうとしたときなんですが、夜十時頃だというのに、フロントの女性が、ひとりで男性客の部屋に入っていったんです。ルームサービスのワゴンもなかったのに。女性が男性の部屋に入るなんて高級ホテルなのにどうなっているのかしら」

「まぁ、女性がひとりで。その女性どんな人だったの?」

「綺麗な方でしたよ」

「その人の名前はわかるかい?」

「父さん」

 その女性が桜子であるのを期待したような態度にうんざりした。

「いいじゃないか。実はね、この子がつきあってる女性がフロントにいるんだよ」

「え、そうなんですか?」

「名前、どう? 覚えてる?」

「おい、母さんまで」

 いい加減にしてくれよとため息が出る。

「ええ。素敵な名字だったので。夕月さんという」

 えっ?

 父が盛大にため息をついた。

「ほら見ろ、ホテルの従業員なんかと付き合う結果がこのざまだ」

 小池が困ったように口に手をあてた。

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