ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「いってらっしゃい」

 玄関で見送ると、彼は私を軽く抱き寄せてチュっとキスをする。

 にっこり微笑んだ彼を手を振りながら送り出した。

 

 こんなに幸せでいいのかな。

 ここで一緒に暮らし始めて三カ月とちょっと。最近はお互いの休みが合うと一緒にワインを飲んで、キングサイズのベッドに運ばれて甘い夜を過ごしたりする。

 彼は『桜子、愛してるよ』なんて言うけれど、あれをピロートークというのだろう。その場の雰囲気で出た言葉で、本音とは違うとわかっている。

『君は言ってくれないのか? 俺が好きだって』

 催促するように彼にささやかれても、私は決して口にしない。せめてもの、細やかな抵抗だ。

 本当は慎一郎さんが好き。

 多分彼が想像している以上にずっと、私は彼が好き。愛している。

 でももし言ってしまって、バレンタインの予定を聞いたときのように突き放されてしまったら、どうしていいかわからない。

 失恋には早い。まだ九カ月もあるんだもの。

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