ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 と、思ったところでパールのピアスが頭に浮かび心がズンと重くなる。

「桜子! あ、ごめん電話中か」

 振り向くと美江ちゃんが、右手を鼻先にあてて、ごめんごめんと謝った。

「じゃあね、優斗。がんばって。また近くなったら電話する」

『はーい』

 電話を切って美江ちゃんに振り向いた。

「ごめんね桜子電話中に」

「気にしないで。ちょうど終わったところだから。どうかした?」

「どうかしたじゃなくてコンプレよ。桜子、またやつらに絡まれたんだって? 大丈夫なの?」

「やつらって」

 思わず笑ったが、浮んだのは苦い笑みだ。

 このところ意図的に私を困らせる女性客がいる。

 彼女たちは慎一郎さんの病院の看護師。もしくは医者。雰囲気が違ったのですぐには気づかなかったが、間違いない。短い間とはいえ入院していたときに見た記憶がある。

 ラウンジでお客様にコーヒーを出したときだった。

『私たちずっと待っているんだけど』

 近くにいた彼女たちが大きな声で不満を言ってきたのだ。

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