ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 まっすぐ私を見つめて告白してくれる彼を前に、胸がいっぱいになった。

 こんなところで泣いちゃいけないと思うのに、涙が止まらない。

 そんなふうに思ってくれていたなんて、夢にも思わなかったから。

「頼むから、ひとりで抱えるなよ」

 肩を引き寄せてハンカチを渡してくれた彼は、私の腕をさする。

「なぁ、桜子」

 これ以上なにも言わないでほしい。涙が止まらない。



 私が落ち着くまで、彼は病院での様子を詳しく話してくれた。

 シルバーヘアーの女性によれば一度目はレストランで見かけたという。

 私に対して彼女たちはわざとぶつかったように感じた。気のせいかとも思ったが、その後の彼女たちの様子を見ていて確信したらしい。

「彼女たちは、笑っていたそうだ。ほかのお客様も、熱いコーヒーをかぶった君を心配そうに見ていた。笑っていたのは彼女たちだけだったって。呆れると同時にしっかりと顔を覚えたそうだよ」

 レストランでも見ていらしたんだ。

 二度目は、最初からよく見ていたという。

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