ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「あの方は常連のお客様で、助けていただいて」

「君の笑顔を見るとホッとするんだそうだ。作り笑顔じゃないのよねって力説していたよ。コルヌイエが大好きだってね」

 ああ、まずい。せっかく止まった涙がまたこみ上げてくる。

「その患者さん。俺が担当することになってね。夕月さんという女性は婚約者だと告白すると、凄く喜んでくれたよ。俺も鼻が高かった」

 ついに耐えきれず、また涙が溢れ落ちた。

「君は自慢の婚約者だ」



 何度目かの涙が落ち着いて、慎一郎さんの泊まるホテルの話になった。

 いつのまにかもう十一時、もうすぐお昼だ。

「君は、今晩どうするの?」

 慎一郎さんは目を細めて私を見下ろす。

 クスッと笑いながら「私も一緒に泊まらせてもらおうかな」と言うと彼は白い歯を見せて笑った。

「夕食は優斗を誘って三人で食べよう」

「ええ」

 宿泊先は君に決めてほしいと言われた。

「いくらかかってもいい。なにしろ今日は君のお腹に双子がいると知った記念日だからな」

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