ドＳな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
　慎一郎さんは、要所要所でうなずきながら、時折質問を交える。

「会ってみたいか？　お父さんに」

「いえ。ただもし、母に花を供えてくれているなら、お礼を言いたいなとは思います」

　母の命日にお墓参りに行くたびに、もしかしたら会えるかなと思う。

「多分、母は喜んでくれていると思うから」

　そうでしょ？　お母さん。



　その日の夜。

　私たちは温泉旅館に泊まった。

　優斗との食事は、明日のランチになった。優斗もさすがに一緒に泊まりたいとは言わなかった。

　部屋は純日本風でありながらセンスのいい素敵な空間で露天風呂もついている。

　部屋に到着して間もなく、当然のように誘われて私たちは一緒に入った。

　ガラス張りで室内から丸見えのお風呂は、別に入る方がむしろ恥ずかしいからいいのだけれど。

　五月の北海道は肌寒いが温泉に浸かるにはちょうどいい風だった。

　後ろから抱えられるようにして湯船に入っていると、この上ない幸せに包まれているようだった。

「くすぐったい」

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