ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 ホテルのスタッフのみんなは、入籍と妊娠を喜んでくれた。

 上司は私が彼と交際していると知ったときから、いずれはこうなるだろうと思っていたらしい。

『なにしろ優秀な心臓外科医だ。しっかりと支えてあげなさい』

 青扇記念総合病院での彼の評判は上司の耳にも届いていたのだ。

 私は体の負担にならないようにと、フロント業務から離れ裏方に異動になった。椅子に座って仕事をするコールセンターのオペレーターで、外線のほか客室からの電話を受けてフロントなどへ橋渡しをする仕事だ。

 チェックアウトの忙しい時間などはフロントを手伝うが、時間も三交代ではなくなる。朝九時から夕方の六時までとなったから、体力的には楽だ。

 そしてひと月後、有給休暇を消化して退職する。

 こんなふうにコルヌイエを去るようになるとは思っていなかった。

「コンシェルジュになりたかったんだけどね」

「まだわかんないよ? 子どもが就学してから復帰した先輩もいるんだし」

「それもそうだね」

< 199 / 273 >

この作品をシェア

pagetop