ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 彼女はフロントに異動が決まった。新人に引き継ぎをしながらフロント業務を始めている。英語が堪能なところを見込まれたようだ。

 彼女は瞳を輝かせた。

「楽しい! お客様にありがとうって言われるのはクセになるね」

 思わず顔がほころんだ。

「よかった。でしょ、楽しいのフロント」

 嫌がっていたのを偶然耳にしていたから、大丈夫かと気になっていた。最初のうちは立ち仕事で脚が辛いとか、よくため息をついているようだったから。

 私もそう。苦手だと思っていた事務仕事もやってみると楽しかった。パソコンも随分使い方を覚えたし、今後のために得たものはたくさんあったと思う。

 休憩時間になりスタッフルームに行ってみた。

「あ、桜子ー」

 よかった美江ちゃんがいる。

「座って座って」

 美江ちゃんが引いてくれた椅子に腰を下ろす。

「ふぅ」

 サイズの大きい制服を借りてごまかしているから、まだそんなに目立ってはいないと思うが。前屈みの体制は辛くなってきた。

「触らせて」

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