ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「朝井、許さなくていいんじゃないのか? 俺も薫に言ったよ、お前は最低な女だな、本気で見損なったってな」

 付き合いが長いから、八代がなにを言いたいかはわかる。

 口ではそう言いながら、だから許してやれと言うんだろう? お前は。

 桜子の妊娠と入籍を知らなかったからという理由でか。

「妊娠してなきゃ、入籍していなければ傷つけていいとでも言うのかよ」

「そうじゃない。ただ」

 言葉の代わりに盛大なため息をつく。

 なにもしないさ、今はな。日本にいない小池を責めたところで、どうなるわけでもないし。

「小池は結局アメリカで、なにやってるんだ」

「さあな。医者は続けているんだろ、多分。いや、それもわからないか」

 小池と会った理由は、俺の恩師である教授の話を聞くためだった。あいつは『渡したいものがあるの。いい論文が手に入ったのよ』と言った。教授がその論文を絶賛していたと言った。

< 230 / 273 >

この作品をシェア

pagetop