ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 この前小池にもらった本は、実際興味深かったというのもあり、会ってみようと思った。コルヌイエならそのまま桜子と家に帰れる。

 ただ、一対一で会うには抵抗があったし、桜子にいらぬ心配をかけずに済むよう八代を誘った。小池と八代は医学生時代の友人だ。八代も向こうでの最新技術の話を聞けるのを楽しみにしていた。

 だが実際に会ってみると話は違った。

 これといって特筆すべきことがない論文。教授の話を聞こうにも、最後まで話をはぐらかすだけ。もらった本の内容について、俺の質問にはなにも答えられない。

 あの様子では現場から離れて久しいだろう。教授ともまったく交流はないに違いない。

「薫は完全に挫折したんだな。居場所を失い、結婚に逃げようとでも思ったか」

 八代がため息混じりにそう言った。

 小池は当時、知識は豊富でもプライドが高くて人の意見を聞けないところがあった。そんな自分を変えられなかったんだろう。

 知ったことではないが。

「どいつもこいつも、他人を巻き込むんじゃねぇよ」

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